こんにちは。BNGパートナーズで転職支援をしております、首藤と申します。人材業界でのキャリアパスは、同業他社か事業会社の人事しかない──そのように考えられてきた時代は、もはや過去のものになりつつあるのかもしれません。 人材業界経験者が転職を検討される際、下記のようなご不安を持たれる方も少なくないのではないでしょうか。「人材業界での経験が他の業界でも通用するのか不安」「専門性が限定的で、転職の選択肢が狭いのではないか」「他業界の知識が不足している中で、どのようにアピールすればよいのか」私自身もコンサルタントとして転職支援を始めた当初は同様の認識でした。しかし、この数年で市場は大きく変化しています。本記事では、多くのスタートアップ企業をご支援する中で得られた知見に基づき、皆様の疑問にお応えする連載の第一回として、「人材業界出身者のネクストキャリア」をテーマに解説し、皆さんのご経験が、なぜ、そしてどのように他業界で価値を発揮するのか、その理由を深く掘り下げていきます。1分で読める記事要約人材業界経験者のキャリアパスは、同業種や人事に留まらず多様化しており、これは現代のビジネスが「課題解決型」へとシフトし、顧客の潜在的な課題を見抜き解決へ導くスキルが他業界でも求められるようになったことが背景にあります。その結果、SaaS企業の営業職やカスタマーサクセス、経営企画といった職種で市場価値が高まっています。なぜ今、「人材業界の経験」が他業界で求められるのか?まず、他業界でなぜ人材業界のご経験が求められるのでしょうか。私は、 現代のビジネスが「課題解決型」にシフトしているからというのが理由だと思います。かつてのように「決まったモノを売る」ビジネスは減り、特にSaaSやコンサルティングといった無形商材を扱う企業では、顧客自身も気づいていない「潜在的な課題」を発見し、解決策を提案することがビジネスの核となっています。企業の「〇〇な人が欲しい」という要望を鵜呑みにせず、「なぜその人が必要なのか?」「その採用で本当に事業課題は解決するのか?」と深掘りし、本質的な課題解決を提案する。この「課題発見・解決能力」は、他業界の営業職や事業開発職でそのまま通用する、非常に価値の高いスキルだと思っています。 先日、あるSaaS企業の採用責任者から、このようなご相談を受けました。「フィールドセールスを探しているが、中々いい人が見つからない。ただモノを売るだけでなく、お客様自身も気づいていない潜在課題を発見し、社内外の人間を巻き込みながら、粘り強く案件を前に進められる人を採用したい」この言葉を聞いて私は、これこそ、多くの人材業界の方が、日々の業務で実践されていることそのものではないか、と思いました。このように、業種は違えど、ビジネスの根幹で求められる能力には多くの共通点があります。私たちが多くの経営者との対話から見えてきた、人材業界出身者が持つ「ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)」を整理しました。人材業界経験者が持つ7つの強み僭越ながら、これまでの転職支援経験から、人材業界で身につけられる特有のスキルについて整理させていただきました。これらの能力は、他業界でも高く評価される傾向があります。1. 決められた期間内での成果創出に対するコミットの能力人材業界では「いつまでに何名採用する」という明確な期限と成果目標が設定されることが一般的です。この環境で培われる「期限内での確実な成果創出」への強いコミット意識は、プロジェクトマネジメントや営業職において極めて重要な要素として評価されています。特に、不確実性が高い新規事業や急成長企業では、この確実性への意識は貴重なスキルとなります。2. 複合的なストレス環境への適応力(ストレス体質)クライアント企業からの厳しい要求、候補者からの様々な相談、自身の業績目標達成プレッシャーなど、複数の異なる性質のストレス要因を同時に管理する経験は、変化の激しいビジネス環境では非常に価値の高いスキルです。このストレス耐性と対応力は、管理職やプロジェクトリーダーとして重宝される要素の一つです。3. データに基づくKPI管理能力紹介件数、面接通過率、入社率、早期退職率など、複数のKPIを継続的に分析・改善する習慣は、データドリブンな経営を志向する現代企業では極めて重要なスキルです。単に数字を追うだけでなく、KPI間の相関関係を理解し、本質的な課題解決につなげる能力は、事業企画や経営企画職でも高く評価されています。4. IT系の人材紹介経験者が持つミーティングのファシリテート能力特にIT系の人材紹介を経験された方は、技術的な議論から事業戦略まで幅広いテーマでのミーティング進行に慣れています。エンジニア、マネージャー、経営陣など異なる視点を持つ参加者間での合意形成能力は、プロジェクトマネジメントや事業開発の現場で非常に重宝されるスキルです。5. 個人単位ではなく周囲の力を借りて成果を上げる力人材紹介業務は決して個人完結型の仕事ではありません。マーケティング部門、リサーチチーム、営業アシスタント、他のコンサルタントなど、様々な関係者との連携が成功の鍵となります。この「チーム全体での成果創出」への意識と実行力は、組織として結果を出すことを重視する企業では極めて価値の高い能力として認識されています。6. 周囲のアドバイスを柔軟に聞き入れる柔軟性人材業界では、先輩コンサルタント、マネージャー、時には候補者や企業担当者からのフィードバックを素直に受け入れ、改善につなげる姿勢が成功には不可欠です。この学習姿勢と柔軟性は、技術革新や市場変化への適応が求められる現代のビジネス環境において、極めて重要な要素として評価されています。7. 複数案件の同時管理能力(キャパシティの広さ・大きさ)同時期に複数の企業顧客と候補者を管理し、それぞれ異なるタイムラインと要求レベルの案件を並行して進める能力は、人材業界特有のスキルです。このマルチタスク能力と優先順位付けのスキルは、事業企画、営業マネジメント、カスタマーサクセスなど、複数のステークホルダーとプロジェクトを同時に管理する職種では特に重宝されています。実際の求人要件との整合性では、これらの強みが、”実際の採用現場”でどのように評価されているのでしょうか。ここで、BNGが保有している実際の求人を基にどういったスキルや経験が求められてくるのか、ご紹介させてください。下記は急成長中のSaaS企業でデータ活用クラウドの新規開拓を担うポジションです。職務内容・顧客へのヒアリング、事業開発、商品・サービス開発への改善案出し・主要顧客の開拓及び関係性と信頼の構築・潜在課題の把握・抽出、プロダクト機能へのフィードバック必須条件・法人への新規営業経験(2年以上)・複数の意思決定者に対する営業経験・新規営業メインの経験・対面での営業経験歓迎条件・システム・ソフトウェアなど無形商材の経験・営業としての実績・SaaSサービスに携わった経験・スタートアップやベンチャー企業でのカオスな環境での経験必須条件にある「複数の意思決定者に対する営業経験」や「潜在課題の把握・抽出」などは、まさに皆様が培ってきたスキルと重なるかと思います。このように、求人票の言葉を一つひとつ分解していくと、人材業界での経験が強力な武器になっていると考えています。考えられるキャリアパスについてご自身の市場価値を再認識いただけたところで、次に「では、その価値を活かして、どんな選択肢があるのか?」という具体的なキャリアパスの話に移りましょう。私たちがご支援してきた中で、特に成功例が多い4つのキャリアフィールドをご紹介します。営業・事業開発職SaaSや各種ソリューションサービスの法人営業、新規事業の企画・推進などの職種では、顧客の課題発見力や関係者調整力が重視される傾向があります。特に、複雑な意思決定プロセスを持つ企業顧客への提案経験は高く評価されます。カスタマーサクセス職既存顧客の継続利用促進や満足度向上を支援する職種で、長期的な関係構築経験と顧客の成功を支援する姿勢が評価される場合があります。人材業界で培った「候補者の入社後フォロー」の経験は、この職種で直接活かせるスキルです。人事・組織開発職従来の採用業務を超えて、事業戦略と連動した人事施策の企画・実行を担う職種もございます。組織課題の発見と解決提案の経験は、戦略人事の領域で特に価値があります。経営企画・事業企画職全社的な戦略立案や新規事業の検討において、業界横断的な知識と分析力が求められる職種です。複数業界での採用支援経験は、市場分析や事業機会の評価において独自の視点を提供できます。人材業界で働く中で自然と身につく業界横断的な知識も、大きなアドバンテージとなります。複数の業界での採用支援を通じて得られる各業界の特性、課題、トレンドへの理解は、事業開発や経営企画などの職種では特に重宝される傾向があります。まとめ:人材業界出身者の市場価値が変化しているここまで、人材業界出身者の新たな可能性についてお話ししてきました。私たちBNGパートナーズは、2009年の創業以来、一貫して企業の未来を創る経営幹部・CxOクラスの転職支援に特化してまいりました。5,000社以上の成長企業の経営陣との対話を通じ、「事業を伸ばすために本当に必要な人材とは誰か」という問いに向き合い続けています。その最前線にいるからこそ、私たちは「人材業界出身者の市場価値が、今まさに変化している」という事実を肌で感じています。もちろん、異業種への転職が、すべての方にとっての最適解だとは限りません。しかし、これまでの経験を違う角度から光を当てることで、ご自身も気づかなかった価値や可能性が発見できることもまた事実です。もし、この記事を読んで、少しでもご自身のキャリアの可能性について考えてみたいと思われたなら、ぜひ一度、お気軽にお声がけください。私たちは、一方的に求人を紹介するのではなく、あなたの経験を棚卸しし、客観的な市場の視点をお伝えしながら、納得のいくキャリアを一緒に探していくパートナーでありたいと考えています。あなたの次の一歩が、より豊かなものになるよう、全力でサポートさせていただきます。